小説「サークル○サークル」01-399. 「加速」

 アスカがユウキに携帯電話で連絡をすると、ユウキは「すぐに行きます」と答えた。レナが不倫をやめるのだ。彼にとっては、どんなことよりも優先順位が高いだろう。
 アスカはユウキが来ることを二人に伝えると、沈黙が落ちた。
 別段、この三人が揃ったところで話すこともなかったし、話題があったとしても、会話が弾むことはないだろう。
 アスカはただただ時間が過ぎるのを待っていた。ちらりとレナを見ると、緊張の面持ちで目の前のコーヒーカップに視線を落としている。
 ヒサシはつまらなさそうに携帯電話をいじっていた。
 たった数十分が何時間にも感じられる、というのは、こういうことを言うのだな、とアスカは思いながら、忙しなく働いているウェイトレスを見ていた。
 ユウキが来て、当たり障りのない会話をして、そして、この案件は終わる。そうすれば、この案件が始まってから、ずっとアスカの中にあったモヤモヤは消えるのだ。
  その所為なのか、アスカはユウキがやって来るのが不安でもあり、楽しみでもあった。

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