小説「サークル○サークル」01-410. 「加速」

もしかしたら、ヒサシはわざと“レナが誰を好きか”ということをユウキに言わせるように仕向けているのかもしれない。ユウキが傷つき、動揺するのを狙っていることも十分考えられる。ヒサシは策士だ。頭が切れる。アスカはユウキが暴走しないことをただただ祈るばかりだった。
「だとしたら、問題ないのではないでしょうか? 好きな人と一緒にいたい、その想いを叶えられるんですよ?」
「それが不倫という形でなければ良いことだと思います。幸せなことでしょう。けれど、不倫であれば、一緒にいることで幸せだったとしても、別の感情も一緒に沸くとは思いませんか?」
「別の感情とは?」
「罪悪感や悲しみ、嫉妬……様々な不安を誘因する感情です」
ユウキの言葉をヒサシはふっと鼻で笑った。なぜ鼻で笑われたのか、ユウキはわからないようで眉間に皺を寄せる。
「失礼。それは、恋愛をしていたら、どんな人でも持つ感情ではありませんか?」
「……」
ヒサシの言うことはもっともだ。思わず、ユウキは言葉を失った。

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