小説「サークル○サークル」01-431. 「加速」

「それはミステリーだね」
家に帰るなり、アスカは今日のマキコとのやりとりをシンゴに話した。それを聞いたシンゴは首を傾げながら、言った。
「そうなのよ。理解出来ないわ。自分が不倫していることを認めてしまえば、いいだけの話でしょう?」
「認めたくない何かがあるか、はたまた……」
「何よ? 他にも何か理由があるの?」
「いや、そんなことないと思うんだよな……。突拍子もなさすぎる。きっと、何か他の理由があるんだろうね」
「気になる……」
「でも、もう終わった案件なんだし、アスカが気にすることはないよ」
「そうなんだけど……」
アスカは腑に落ちないようだった。
「さーて、そろそろ、寝ようかな」
「仕事はいいの?」
「もう脱稿したから、大丈夫」
シンゴは微笑むと、寝室に消えていった。

シンゴは寝室のベッドに寝転ぶと、ひんやりとしたシーツの感触にどきりとする。
睡魔がゆっくりと身体を侵食するには、まだ時間がかかりそうだな、とシンゴはその冷たさを感じながら思った。

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