小説「サークル○サークル」01-370. 「加速」

アスカは頭をフル回転させて、次の言葉を探していた。
「でも、常にどちらか都合の良い方で考える、というのは、あまりにも虫が良すぎない?」
「そうだね。そう言われても仕方ない」
「女はたった一人、と言われるのにとても弱いわ。だから、つい都合の良い女に成り下がってしまうの。あなたはたくさんの女性を都合よく使っているだけじゃない?」
「手厳しいなぁ」
アスカの鋭い言葉にもヒサシは余裕の表情を浮かべ、笑っている。
この男のすごいところは、どんな言葉をアスカが口にしても、動じないところだ。
「でも、都合の良い女が嫌なら、やめればいいだろう?」
ヒサシはさも当然と言ったように言った。
「それは男性本位の考え方だわ。やめられないように言葉巧みにあなたが囲っているのでしょう?」
ヒサシは黙ってグラスを傾ける。アスカになんて返すべきか思案しているのだろう。アスカは次に切り出す言葉を考えていた。
今、この時間がアスカは今回の案件で一番頭の使う時間のような気がしていた。


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