小説「サークル○サークル」01-82. 「動揺」
- 2012年04月15日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「お待たせ致しました」
しばらくして、アスカはヒサシに呼ばれて、再び彼の前に立っていた。
「おかわりを」
静かにヒサシは言い、アスカはドリンクの注文をマスターに伝えに行く。ドリンクが出来上がると、ヒサシの元へと運んだ。
「バーボンでございます」
「ありがとう」
ヒサシはドリンクをコースターの上に置こうとしたアスカから、わざと手を添えて受け取った。初めて触れるヒサシの手にアスカの鼓動は高鳴った。
「キレイな手をしているね」
ヒサシは事もなげに言う。
「そんなことありませんよ」
アスカは速まる鼓動に気付かれないよう、俯きながらヒサシの言葉に応えた。
「白くて、細くて、もっと触れたいと思ってしまう」
歯の浮くようなセリフもヒサシは照れることなく口にする。それは酒が入っている所為なのか、生まれ持った才能なのか、アスカには測りかねたが、それでも彼に言われると嫌な気はしなかった。まるで、漫画や小説の主人公になった気分さえするのだから、自分も手に負えないな、と呆れてしまう。アスカが顔を上げると、ヒサシの両の瞳がアスカをじっと見据えていた。
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