小説「サークル○サークル」01-93. 「加速」

「今日はどういったご用件で?」
 アスカは罪悪感を覚えながらも平然と言った。マキコは俯いたまま、静かに口を開き始める。
「実は……調査の継続をお願いしたくて……」
 やっぱり、とアスカは内心思った。きっとこうなるだろう、と思っていた。浮気をやめさせたい、という気持ちが途中でなくなるはずがないのだ。マキコは以前、「浮気相手と別れても自分のところには戻ってこない気がする」と言っていた。けれど、シンゴに言わせれば、「女は全て浮気相手になりうる」という心配から、アスカとの接触さえも怖がり、依頼を取り下げることにしたのではないか、ということだった。
 シンゴの言うことが正しければ、彼女の中でアスカに対する不安が何らかの形で取り除かれたのか、はたまた、それ以上に浮気相手と別れさせる必要が彼女に出来たのかのどちらかだろう。少なくとも、後者には「子どもが出来た」という明確な理由がある。
「勿論、喜んで引き受けさせていただきます」
 アスカは出来る限り自然な笑顔をマキコに向けた。

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