小説「サークル○サークル」01-110. 「加速」

 シンゴはアスカの帰りを待つ間に夕飯の用意をして、風呂を沸かし、余った時間にぼんやりとテレビを観た。バラエティ番組では最近引っ張りだこのピン芸人がネタを披露している。すでにそのネタは数十回見たことがあった。同じネタばかりやるような芸人はあっという間に消えていく。視聴者が飽きるスピードは瞬きと同じくらい速い。シンゴは飽きが来始めたネタを最後まで見ることなく、チャンネルを変えた。すでにそのネタのオチを知っていたからだ。
 ニュースを見ながら、シンゴはぼんやりと昼間のユウキとのやりとりを思い出していた。ニュースを見ているはずなのに、全く映像も音声も頭の中に入ってはこない。自分の話したストーリーを面白そうだと言ってくれたユウキへの申し訳なさを感じると同時に、そろそろ本腰を入れて、小説を書かないとまずい時期に来ていることに頭を悩ませていた。書けと言われて書けるなら、とっくに書いている。シンゴが小説を書けなくなってしまった理由は明々白々だった。

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