小説「サークル○サークル」01-141. 「加速」

「実は……」
「実は……?」
 シンゴの神妙な面持ちにユウキもつられながら、耳を傾ける。
「浮気されたんだ」
「浮気!? シンゴさんが!?」
「しーっ! 声が大きいよ」
 周りに誰か他の人間がいるわけではなかったが、シンゴは慌てて、ユウキを制する。
「すみません……。意外だったもので……」
「そんなわけだから、ちょっとね」
「そりゃあ、落ち込みますよ……。でも、どうしてわかったんですか?」
 遠慮なく、ユウキはシンゴに質問する。
「尾行してたんだ」
「尾行!?」
「だから、声が大きいって!」
「どうして、そんなことしたんですか?」
「どうしてって、次の小説の題材が妻の仕事と同じだったからだよ」
「それで尾行して、浮気現場を見てしまった、と……」
「そういうこと」
 ユウキは数回うんうんと頷くと、シンゴの方を見た。思わず、シンゴは身を引く。
「尾行は今日もするんですか?」
「いや、わからない。妻の仕事の状況次第だからさ」
「そうですか……。あの、一つお願いしたいことがあるんですけど」
 ユウキは真剣な顔をして、シンゴを見据えた。

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