小説「サークル○サークル」01-144. 「加速」

「出来たわよ」
アスカに言われて、シンゴは食卓テーブルへとやって来た。テーブルの上にはシチューやサラダなどがバランス良く並べられている。
「久々に作ったから、美味しいかはわからないけど」
アスカは言いながら、席に着いた。
「君の手料理を食べられるなんて、嬉しいな」
シンゴは無理に微笑んだ。内心、アスカは浮気の後ろめたさを払拭する為に料理をしたのではないか、と思っていたけれど、言えるはずもなかった。そんなことを言ったら、尾行をしていたことがバレてしまう。そんなことをする小さな男だと思われるのは嫌だった。
「いただきます」
シンゴは笑顔でそう言うと、食事に手をつけた。
「どう? 美味しい?」
アスカに問われ、シンゴは「すごく美味しいよ」と再び作り笑いをアスカに向けた。
「良かった。シンゴは料理が上手だから、がっかりされたらどうしようって思ってたのよ」
アスカは嬉しそうに言う。ふとシンゴは新婚の頃を思い出した。アスカは結婚した当初、いつだって、こんな風に笑っていたではないか。アスカが笑わなくなってしまったのは、、自分に原因があったのではないか、と思わずにはいられなかった。

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