小説「サークル○サークル」01-160. 「加速」

 その日の晩、アスカは腕によりをかけて夕飯を作った。満足そうに微笑む彼女の前には、食事を口にするシンゴの姿がある。
「うん、おいしいよ」
「良かった」
 シンゴの言葉にアスカは更に笑顔の皺を深くした。
「仕事は順調?」
「ああ、ちゃんと書けてる。アスカの方はどう?」
 シンゴの言葉に待ってましたとばかりに、アスカは書類を差し出した。
「これは?」
「この間から関わってる案件の不倫相手の書類」
 シンゴはアスカから書類を受け取ると、まじまじと眺めた。そこにはヒサシの不倫相手であるレナのプロフィールが事細かに書かれていた。
「この人がどうかしたの?」
「この女の子と接触しようと思ってる」
「へぇ……。今回は女の子の方に接触して、別れを促すの?」
「ええ。ターゲットの方は手ごわそうだから。でも、この女の子に接触するのもちょっと難しくて」
「どうして? カフェで働いてるなら、ここの店員になれば簡単じゃない?」
「それがそうもいかないのよ」
 シンゴはアスカの言葉に怪訝な顔をした。

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