小説「サークル○サークル」01-191. 「加速」

 食卓にカルボナーラとサラダが並び、アスカとシンゴは他愛ない会話を楽しみながら食事を進める。けれど、アスカは自分の気持ちのもやもやの所為で、どこか上の空だった。
「レナとの接触は上手くいきそう?」
「……それなりにね」
「どのくらいの期間で、この仕事は終わりそうなの?」
「さぁ……。レナがターゲットと別れてくれたからかな」
 アスカの返事は歯切れが悪い。シンゴはそんなアスカの些細な変化に気が付いていた。しかし、シンゴは敢えて何も言わなかった。シンゴの勘は働いていた。きっとターゲットのことが絡んでいるに違いない。シンゴはそう踏んでいた。そうなれば、シンゴのやることはただ一つだ。再び尾行をして、アスカの状況を確認するほかない。自分のしようとしていることは、何度考えてもダメな男のやることに思えてならなかった。それでも、シンゴは真実を知りたかった。それは夫としてというよりも、もしかしたら、作家としてなのかもしれなかった。

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