小説「サークル○サークル」01-196. 「加速」

「どうしてですか!?」
 納得出来ないといった口調でユウキはシンゴに詰め寄る。
「どうしてって、そんなことしたっていいことは何もないからだよ」
「シンゴさんは奥さんの浮気現場を押さえる為に尾行していたんですよね?」
「ああ、そうだよ」
「だったら……」
「だから、やめた方がいいって言ってるんだよ」
 シンゴの呆れとも悲しみとも取れない複雑な表情を見て、ユウキは思わず黙った。
「でも……」
「不倫現場を押さえて、“不倫はやめた方がいい”と君が言ったとする。けれど、彼女は不倫をやめるかな?」
「熱意を持って、説得すればきっと……」
「それは君の理想だろ? 不倫がいけないことだってことは、彼女も重々承知のはずだ。けれど、わかっていながら、彼女は不倫をしている。そんな彼女が簡単に不倫をやめられると思う? 僕はそうは思わない」
「……」
 ユウキは何も言わなかった。シンゴの言葉がぐさりと胸に突き刺さり、何も言えなくなってしまったのだ。

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