小説「サークル○サークル」01-198. 「加速」
- 2012年12月03日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「そんなに尾行について来たいならついてくればいい。足手纏いになるようなら、容赦なく置いて行く。それでいいなら」
「はい! ありがとうございます!!」
ユウキは満面の笑みで返事をした。
シンゴはユウキと別れると、真っ直ぐ家に帰った。家に帰っても誰もいない。しんとしていて、どこか肌寒い。人がいないということは、こういうことだ。少しの物悲しさを感じながら、シンゴは手洗いとうがいをいつも通り済ませると、書斎へと向かった。
パソコンの電源を入れ、原稿を書き始める。パソコンのライトが目に染みた。
自分のしようとしていることが実はとても馬鹿馬鹿しいことだ、ということに、ユウキを諭している自分を見て気が付いた。
尾行なんてするもんじゃない。したって、何の足しにもなりはしない。ただ空しさや遣る瀬無さが募るだけだ。
ユウキと勢いで尾行の約束をしてしまったものの、シンゴは悩んでいた。尾行をすること自体もそうだったが、何より浮気をしている妻の姿を他人に見せるというのは、いささか男のプライドが傷ついた。浮気されていることを告白している以上、今更だと思われるかもしれないが、それとこれとは別問題だった。
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