小説「サークル○サークル」01-209. 「加速」
- 2012年12月25日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「それじゃあ、また」
シンゴはそう言うと、立ち上がった。随分と長い時間、公園にいたのだと腰の痛みでわかる。シンゴはそれなりに若かったが仕事柄、腰痛持ちだった。長時間座ると、それに比例して背中になんとも言えない痛みが走った。
その日の夜、アスカは帰ってこなかった。無断外泊というやつだ。
今までもこういうことがなかったわけじゃない。彼女はよく事務所でうたた寝をして、そのまま、夜を明かしてしまうことがあった。けれど、それも今となっては、本当だったのか嘘だったのかは疑わしい。今回の浮気が初めての浮気とは限らないのだ。
シンゴは落ち着きなく、部屋を行ったり来たりしている。こんなことをするのは、漫画の世界だけだと思っていたが、そうでもないらしい。人間はそわそわするとじっとしていられない生き物のようだ。
シンゴは大きな溜め息をつくと、仕事用の椅子にどかっと腰を下ろす。画面は文字の入力を待っているかのように点滅していた。
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