小説「サークル○サークル」01-267. 「加速」

「今日は随分と朝早いんだね」
シンゴはコーンスープを一口飲んで言う。
「ええ。今日はカフェには行かずに、飲み会の前に事務所寄るだけにしようと思って」
「仕事は大丈夫なの?」
「特に案件の進捗もないし、大丈夫よ。たまには家事をやる日も作らないと。今日は洗濯もアイロンかけもバッチリやってから、出掛けるわ」
アスカは言いながら、トーストに手を伸ばした。
アスカのトーストには卵とトーストの間にケチャップが塗られている。ケチャップの赤い色がちらりと見えて、アスカがケチャップ派だということを思い出していた。シンゴのトーストにはマヨネーズが塗られている。
サラダとトーストを交互に食べながら、シンゴはアスカに気付かれないようにアスカのことを何度もちらちらと観た。
アスカの様子はいつもと同じだ。キッチンに立っていた時のようなウキウキした感じは見受けられなかった。もしかしたら、浮かれている自分にはっとして、いつも通り振る舞っているのかもしれない。
シンゴはコーンスープを飲み干して、空になったマグカップの底をしばらくの間、見つめていた。

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