小説「サークル○サークル」01-270. 「加速」

「ごちそうさま」
シンゴはアスカが食べ終わったのを見計らい、食器を持って席を立とうとする。
「いいよ、置いておいて。私が片付けるから」
「でも……」
「言ったでしょう? 今日は家事をバッチリするって」
アスカはシンゴの手から皿を取ると、シンクへと持って行く。
「……」
シンゴは黙ったまま、アスカの後ろ姿を見据えた。
全てのことが別れの兆候にしか思えず、嫌な考えしか浮かばない。
シンゴはアスカに気付かれないように溜め息をつくと、ソファに腰をかけた。
すぐに書斎に行くのは気が引けたし、かと言って、ダイニングテーブルにいるのも違和感がある。
テレビの電源ボタンを押すと、見慣れた朝の情報番組がついた。テレビには馴染みのキャスターが映し出され、昨日起きた事件の新たな情報が次々と流れてくる。シンゴにもそのニュースが聞こえてきてはいたけれど、耳には入ってこなかった。移ろう画面を目が的確に追いかけていくだけだった。
今日の朝からシンゴはずっと上の空だった。

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