小説「サークル○サークル」01-314. 「加速」

「ご、ごめん……!」
 久々に見る妻の下着姿にシンゴはあたふたとし、寝室のドアをパタリと閉めた。
 不意のことだったとは言え、こんなにもドキドキしてしまっている自分にシンゴは驚いていた。
 そう言えば、いつからか、アスカとは男女の関係にすらならなくなった。いわゆるセックスレスというヤツだ。いつからだろう、と考えて、シンゴは結婚して、自分が小説を書かなくなった頃からだと気が付いた。
 ああ、なんだ。全ての原因は自分にあるのではないか、とシンゴは溜め息をついた。

 アスカはワンピースに着替えると、寝室から出て来て、リビングへとやって来た。
「さっきはごめん。まさか、着替えてるとは思わなくて」
「いいわよ。減るもんじゃないし」
 だったら、あんなに怖い顔して怒ることないじゃないか、と喉元まで出てきたのを慌てて飲み込んだ。そんなことを言ったって、さっきの怒りをぶり返すだけだということは、長い付き合いでわかっている。こういう時は何も言わないに越したことはない。

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