小説「サークル○サークル」01-1.「依頼」
- 2011年11月01日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「お願いがあるんです」
女は事務所に入ってくるなり、そう言った。ここは別れさせ屋「エミリーポエム」ちんけなこの名前を考えたのは他でもないここの所長であるアスカだ。
アスカは女に視線をやり、銜えていたタバコを口から放すと、煙を吐き出した。
「あなたは?」
「先日、お電話させいただいたカイソウ マキコと申します」
女の名前を聞いて、アスカは目だけ天井に泳がせる。彼女が何かを思い出そうとする時の癖だった。
「あぁ、ご主人の不倫をやめさせたい、って言ってた?」
「そうです。主人とその不倫相手を別れさせたいんです!」
マキコはぎゅっと手を握りしめ、吐き捨てるように言った。
「今、お茶を淹れますから、どうぞそちらにかけて下さい」
アスカは至って事務的にマキコに言うと、短くなった煙草を灰皿に押しつけ、キッチンへと消えた。エミリーポエムは古びたビルの2階に位置する。キッチンも旧型で使い勝手は悪かったが、お湯が沸かせればいいと思っているアスカにとっては、別段問題はなかった。
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