小説「サークル○サークル」01-362. 「加速」

「でも、それだけ? たったそれだけの為に私に依頼するかしら?」
「すると思うよ。お金もかけずに、旦那の浮気の決定的な証拠を集められるし、一石二鳥だと思わない?」
「旦那の不貞行為が原因で離婚。そして、不倫相手と再婚して、子どもを産む……」
「そういうこと。依頼者は慰謝料もらい、新しい幸せも手に入れることが出来る」
「怖い女……」
「でも、今、君が相対しているのは、そういう人なんだよ」
「手強そうね……」
「そうだね。とても不利な状況に置かれていると思うよ」
 アスカはシンゴの言葉に何も言わずに立ち上がると、キッチンへと向かう。シンゴはそんなアスカの姿を何も言わずにじっと見ていた。
 アスカは食器棚から二つワイングラスを取り出すと、冷蔵庫で冷やしていた赤ワインを注いだ。
 無言のまま、アスカは赤ワインの注がれたワイングラスを持って、シンゴのところへ戻ってきた。
「はい、シンゴも飲むでしょ」
「ああ、ありがとう」
 シンゴは笑いながら、アスカからワイングラスを受け取った。

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