小説「サークル○サークル」01-421. 「加速」

「あの動揺の仕方はおかしかったですもんね」
「ええ。すごいタイミングよね。自分の奥さんの不倫現場を目撃するなんて。しかも、旦那に気が付いても、奥さんは顔色一つ変えなかったもの」
「だから、余計に傷ついたのかもしれませんね……」
レナは複雑そうに俯いた。まだヒサシに気持ちが残っているのか、それとも、一度は愛した人が傷つくのが辛いのか、はたまた、そのどちらもなのかはわからない。けれど、どちらにせよ、レナとヒサシの不倫は終わったのだ。
「でも、最後まで、不倫相手になる気持ちはわからないままだったんでしょうね」
アスカはレナの寂しげな微笑みが忘れられそうにもなかった。

ユウキとレナと別れて、事務所で簡単な事務処理をすると、アスカは帰宅した。
玄関のドアを開けると、ビーフシチューのいい香りが鼻先をつく。
「ただいま」
「あー、お帰り。今、ちょうど、夕飯作ってるところなんだ。先にお風呂に入っておいでよ」
「ありがとう」
アスカはコートをハンガーにかけ、バスルームへと向かった。

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