小説「サークル○サークル」01-27. 「作戦」
- 2011年12月23日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「信じていいの?」
女は大きな瞳を数回しばたたかせて、言った。
「あぁ。つまらない嘘なんてつかないよ」
ヒサシはいけしゃあしゃあと言い放つ。マキコは浮気相手と別れさせたいと言っていたけれど、こんな男、捨ててしまった方が残りの人生正解なのではないか、とアスカは思う。
「今日は泊まっていくだろう?」
ヒサシの言葉に女はグラスに視線を落とす。本心から迷っているのか、迷っている振りをしているのか、アスカには定かではないが、少なくとも断るという即決をしないのは確かなようだ。
「でも……」
女は困ったようにグラスについた水滴をいくつも指ですくった。ヒサシはそんな女の太腿から手をどけることなく、耳元に唇を近付ける。
それ以上先はホテルでやってよ、と思いながらも、アスカは観察を続けた。2人がどういう結論を出すのか、アスカには知る必要があったのだ。
「迷うことなんてないだろう?」
ヒサシは女の耳元から唇と、身体を離して言った。しかし、依然として、ヒサシの右手は女の豊満な太腿に置かれたままだ。女はヒサシの顔を見上げる。
「ううん。服が困るわ。明日も仕事だもの。同じ服を着て出勤なんて、はたしないと思わない?」
「スーツだろう? わからないよ」
「男の人にはわからないかもしれないけど、女同士の目って、とても厳しいものなのよ」
女はヒサシの瞳をしっかりと見据えて言った。
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