小説「サークル○サークル」01-5. 「依頼」

「主人の勤めている会社のビルに入っているセルフサービスのカフェの店員のようなんです……」
 マキコは伏目がちに言った。
「へぇ……」
 浮気の種類としては、特に珍しいパターンではなかった。男は身近な女に手をつけることが多い。社内で不倫をしている人間が多いことからもそれは明白だ。
 アスカは煙草の煙を吐き出すと、まじまじと写真を見た。この手のモテる男というのは、女好きが多く、落とすのは大概簡単だ。けれど、自分がモテることを自覚している分、何人も女を囲おうとするタイプが多い。たちが悪いかもな、とアスカは写真を見ながら眉間に皺を寄せた。
「期限の希望はおありかしら?」
「別れさせてくれるなら、特には……。ただ早ければ早いほど、嬉しいです。出来れば、この子が生まれてくるまでには……」
 そう言って、マキコは自分の腹をさすった。アスカはマキコの腹を見据える。
 やることはしっかりやってたってわけね……とアスカは内心ごちる。
「今、何ヶ月目?」
「3ヶ月です」
「そう……。半年以内……出来れば、3ヶ月以内には決着をつけたいところね」
「お願いします!」
 マキコは深々と頭を下げた。必死に頭を下げるマキコを見て、アスカは顔を上げるように言うと、金額の説明を始めた。

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