小説「サークル○サークル」01-39. 「作戦」

「仕事が終わってなくて、まだ来られないだけかも」
 アスカの言葉にヒサシは苦笑した。
「だといいんだが……」
「やけにネガティブな答えばかりですね」
「男ってのは、いつも自信がないものさ。特に、気になる女性に対してはね」
「そうかしら? この間のあなたは、そんな風に見えなかったけど」
「よく見てるんだね。探偵みたいだ」
 ヒサシの言葉にアスカは一瞬ドキリとした。
「それは褒め言葉?」
 アスカは微笑みをたたえて、誤魔化す。ヒサシはアスカの動揺には気付いていなようだった。アスカはそっと胸を撫で下ろした。
「君は頭の良い女性だね」
 そう言って、ヒサシはグラスに残っていたジントニックを一気に喉に流し込む。
「そんなことはないですよ。至って、普通です」
「頭が良くない、と言わないところがまたいい。頭が良いと言われて、頭が良くないと答えるのは、嫌味にしか聞こえないからね」
「私は事実しか言わない主義なんです」
 アスカは意味ありげに微笑み、「何を飲まれますか?」とヒサシの空になったグラスに視線を向ける。
「同じものを」
 アスカはヒサシのオーダーをマスターに伝えに行き、しばらくして、ジントニックを持って、ヒサシのところに戻ってきた。

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