小説「サークル○サークル」01-55. 「動揺」

「そんな中学生みたいな発想するかしら?」
「女の半数以上は、そうだと言っても過言ではないと思うけど」
「でも、私はそうじゃないわ」
「アスカはね。君は少し変わってるから」
 シンゴはさらりと言ってのける。内心腹も立ったが、アスカは言い返さなかった。心当たりがありすぎたのだ。自分は人とはどこか違う。それは指摘されなくとも、自分で気が付いていることだった。でなければ、大学卒業と同時に別れさせ屋など開業したりしない。
「男ってのは、浮気する生き物だって言うだろう?」
「そうね。でも、ここに例外がいるわ」
「あぁ、僕はしないね」
 アスカは浮気なんてする度胸がない、という皮肉を込めて言ったつもりだったが、シンゴには伝わっていないようだった。むしろ、良い意味で受け取っている様子さえ窺える。
「なんにでも例外っていうのはあるものさ」
 シンゴは涼しい顔をして、ビールを飲み干した。
「だいたい、男女の友情ってものが成り立つと思うかい?」
 シンゴの話は尚も続く。いつもなら、この辺でもういいと思うところだったが、今日のアスカは違った。アルコールも手伝って、いささか良い気分なのも確かだが、何よりシンゴの話は興味深かった。久しぶりにシンゴが作家である、ということを彼女に思い出させていた。

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