小説「サークル○サークル」01-61. 「動揺」

「女の勘で浮気に気が付き、ケータイを見て確信に変わる。浮気発覚で一番よくあるパターンだってことは、アスカが一番よく知っているだろう?」
「そうだけど……」
 しかし、アスカはどこか腑に落ちなかった。マキコがそんなことをするような女に見えなかったからだ。今になって思うと、依頼された時にどうして浮気に気が付いたのか、ということを訊かなかったことを後悔していた。いつもなら、間違いなく訊いていたはずだ。けれど、あの時、なぜかそんなことを訊く気にはならなかった。それはマキコの持つ雰囲気やしぐさが理由だったのだろうが、後悔だけがアスカの気持ちに残る。
「そうやって、依頼者はターゲットの浮気を知り、浮気相手までをも知ってしまった。そして、君のところにやって来た。外で仕事をしていれば、気が紛れるかもしれないけれど、ずっと家にいる専業主婦にとっては、家庭が全てになってしまいがちだからね。自然と視野が狭くなってしまうこともあると思うよ。依頼者が多趣味で習い事をいっぱいしていたとかっていうんなら、また違ってくるとは思うけど」
 そこまで言って、シンゴは「まぁ、僕も常に家にいる身だからね、依頼者の気持ちがわからなくはないんだ」と付け加えた。

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