小説「サークル○サークル」01-62. 「動揺」

「視野が狭くなる、自分の世界が家庭だけになる。これって、実はとても怖いことだと思わない? 世界は限りなく広いんだ。けれど、依頼者にとってはそうではなかった。狭い世界だから、なんにでもすぐ手が届く。手が届くなら、敢えて触れないという選択をしない限り、簡単に触れることが出来てしまう。本当は触れない方がいいものにも触れてしまうんだ。けれど、触れれば真実を知ることが出来る。もやもやするくらいなら、一層のこと、傷付いても真実を知りたいと思うのが多分人間ってものだと思う。間違いなく、僕だったら、触れてしまうだろうね」
 小説の文章のような言い回しに聞き入りながらも、最後の一文にアスカは度胆を抜かれた。そして、すぐに言葉が口をついて出た。
「私のケータイ見てるの?」
 驚いた様子で言うアスカに「まさか」と言って、シンゴは笑う。そして、「たとえ話だよ」と続けた。
「だから、たとえどんなタイプの女性だったとしても、ケータイを見るのは別に有り得ない話ではないと思うよ」
 シンゴの言葉を受けて、アスカは唸っている。しばらく唸っても答えは出そうにないと彼女は判断し、シンゴの目をしっかりと見据えると、再び口を開いた。

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