小説「サークル○サークル」01-345. 「加速」

アスカは家に着くと、静かにドアを開けた。
シンゴは寝ているのか、起きて仕事をしているのかわからなかったけれど、邪魔をしたくなかったのだ。
アスカは玄関からリビングへ続くドアを開け、ソファに荷物を置くと、洗面所へと向かう。手洗いとうがいをして、洗面台の鏡に映った自分の顔を見て、溜め息をついた。
疲れ切った顔が鏡越しに自分を見つめている。
アスカはリビングに戻ると、冷蔵庫から牛乳を取り出した。マグカップに注ぎ、電子レンジに入れると、加熱のボタンを押す。
橙色の明かりが灯り、加熱が始まったのをじっと見つめていた。
「帰ってたんだね。おかえり」
はっとして顔を上げると、視線の先には少し眠たそうなシンゴがいた。
「ただいま」
「今、帰って来たの?」
「ええ、そうよ」
「お疲れ様」
シンゴは微笑むと、ソファに腰を下ろした。
「シンゴも何か飲む?」
「僕はいいや。さっき、コーヒーを飲んだばかりなんだ」
シンゴの顔を見て、ほっとする自分にアスカはほんの少し笑みがこぼれた。


dummy dummy dummy