小説「サークル○サークル」01-166. 「加速」

「昨日のプロフィールのことだけど」
 シンゴはコーヒーを一口飲むと、アスカから頼まれていた仕事のことを切り出した。
「いつ頃、出来上がりそう?」
「もうほとんど出来ているから、明日には渡せると思うよ」
「ホントに?」
 アスカは嬉しそうに言った。
「シンゴって仕事、早いのね」
「そんなことないよ。このくらい、普通だって」
 アスカに褒められることに、シンゴは弱かった。アスカが自分のことを褒め、尚且つ喜んでくれているのだ。これほどまでに嬉しいことはないとさえ思った。
 けれど、アスカは浮気をしている。そう思うと、複雑な気持ちになった。
 アスカが優しいのだって、浮気の罪滅ぼしだと考えれば、手放しで喜ぶことも出来ない。けれど、「優しい」という事実だけを見れば、十分、幸せなことだとも思う。どこに焦点を当てるかで、幸せなのか不幸なのかが変わるのだ。
 シンゴは出来るだけ、アスカの浮気について考えないようにした。せめて、一緒にいる時くらい、幸せを噛み締めたいと思ったのだ。

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