小説「サークル○サークル」01-256. 「加速」

アスカの帰りはいつも通り早かった。最近は夕飯の時間には帰ってくる。食材を買ってきて、すぐに夕飯の支度をするアスカは甲斐甲斐しい妻の姿に見えた。
しかし、シンゴは手放しで喜べない。そこには裏があるような気がしてならなかったからだ。
疑惑はやがて確執へと変わってしまう。
シンゴはその前に何か手を打たなければと思った。
アスカが浮気をしていたという事実は許せない。けれど、一度きりの過ちならば――、何度か繰り返されていたのだとしても、今はもう終わっているのだとしたら、シンゴは許せるかもしれない、とも思う。
結局のところ、自分のところに戻って来るなら、それでいい、ということなのかもしれない。
真相はまだわからない。けれど、そろそろ、真相を明らかにするべき時期に来ているのでは、と思っていた。
自分の中で渦巻く感情を持て余しながら、シンゴはキッチンで忙しなく料理に勤しむアスカの姿を見つめていた。
この姿に嘘がなければいいな、と思いながら――。

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