小説「サークル○サークル」01-307. 「加速」

「平気よ。まだ飲み足りないんだもの」
「それならいいんだけど」
アスカとシンゴはグラスを傾けて乾杯する。グラスの中に入っている泡が大きく揺れた。
一口ビールを飲むと、アスカは溜め息とは異なる息を大きく吐いた。
「今日ね、レナと会って来たの」
「どうだった?」
「不倫をやめさせる方向で決着したわ」
「良かったじゃない」
全部近くで見ていたよ、とはさすがに言えず、シンゴは初めて知るような素振りを見せる。
「だけど、まだ安心は出来ないわ。あの子がホントに別れ話を切り出すか、切り出したとして、ターゲットに丸め込まれないか……」
「まだ心配な点はあるってことだね。でも、仕事の半分以上はすでに終わったってところかな?」
「そうね。もしこれでダメだったら、ターゲットに再接触して、ターゲットを私が落とすって方向に切り替えるしかないわ」
「そうならないように祈ってるよ」
「ありがとう」
アスカとシンゴはその後、他愛ない会話を続けた。そして、その会話の最中にアスカの言った「飲んでないとやっていられないのよ」という言葉にシンゴは言いしれぬ不安を感じていた。

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