小説「サークル○サークル」01-308. 「加速」

シンゴが起きた頃には、アスカはすでに仕事に行っていた。壁に掛かっている時計はすでに十一時を指している。朝ご飯を食べるには遅すぎて、昼ご飯を食べるには早すぎる。
取り敢えず、顔を洗い、冷蔵庫から牛乳を取り出すと、なみなみとコップに注いだ。
シンゴはコップを持ったまま、ソファに座ると、テレビをつけた。
昼のワイドショーが始まったところだった。テレビでは相変わらず、芸能人のゴシップが取り上げられている。芸能人というだけで、好奇の目にさらされるというのは、可哀想だな、と思う同時に、有名税にしては高すぎるだろう、とも思う。のんきにそんなことを思いながら、シンゴは牛乳を飲み、ぼんやりと昨日のアスカとの会話を思い出していた。
アスカは上機嫌でありながら、どこか冷静でもあった。まだ喜ぶには早い、というのが長年この仕事をしてきたアスカの感想なのだろう。
けれど、シンゴにとっては、半分くらいはどうでもいいことだった。
シンゴにとっては、アスカの仕事の成功よりも、アスカが浮気をしているか、していないかの方が重要だったし、興味のあることだった。

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