小説「サークル○サークル」01-340. 「加速」

「本当に選ぶべきはレナさんだったと?」
「いや、違う」
「最低」
「最低なことは、俺をずっと見てた君なら、とっくに気が付いていると思ってたけど」
「そうね。気が付いてたわ。でも、言わずにはいられない程、最低だと思ったのよ」
「そう思われても仕方ないだろうね。さっきも言っただろう? 付き合っているのは四人いるって」
「ええ」
「君がコートを汚してしまったあの女性がしいて言えば、本命ってところかな」
「彼女は自分以外に三人いることは知っているの?」
「知るわけないだろう? 知ってたら、付き合うわけがない。男は浮気する生き物だからなんてカッコつけて、浮気は平気なんて言う女は沢山いるが、心の底から許している女なんていやしないんだよ」
「そして、不倫をしている女は自分が一番愛されている、と思い込む」
「その通り。奥さんよりも愛されている、と勘違いしている。でも、まぁ、俺の場合は、少なくとも妻よりは愛してるけどね」
ヒサシの言っていることは、きっと多くの男の本音なのだろう。けれど、本音だからと言って、正しいと認めることは出来ない。ただこんなにストレートに言われてしまっては、否定のしようがなかった。
彼は嘘をついているわけではないのだ。事実を述べているだけなのだ。

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