小説「サークル○サークル」01-341. 「加速」

「じゃあ、レナさんがあなたの元から去るのは別に問題ないんじゃない?」
「それとこれとは話が別だ」
一体、どう別なんだろう、とアスカは思ったが、何も言わず、ヒサシの話の続きを聞くことにした。
「レナは若くて可愛い。そばに置いておきたいと思うのは自然な気持ちだと思う。彼女が俺よりも好きな人が出来たとか、俺にほとほと愛想が尽きたというのなら、引き留めはしないけど、別れさせ屋の君にそそのかされて、別れたいというのは、“はい、そうですか”とは言えないね」
「そそのかすだなんて、人聞きの悪い。私の仕事よ」
「失礼。でも、俺の気持ちはそういうことさ。彼女が自分で考え、決めたことならいつだって歓迎するよ」
「あのくらいの年頃は、周りに流されやすいのよ。でも、彼女の今回の判断は懸命だと思うわ」
「それは君からしたら、だろ?」
「ええ、女の私からしたらね」
「性別で来たか」
ヒサシは溜め息をつき、酒を煽ると、マスターにもう一杯同じものを注文した。注文したドリンクが運ばれてくるのを見計らって、アスカが口を開いた。

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