小説「サークル○サークル」01-342. 「加速」

「そりゃそうでしょう。あなたが男は浮気をするものだというんだったら、浮気相手にされている女ほど、惨めなものはないわ。不倫だとしても、本命であるなら、また話は違うけれど、今回なんて、浮気相手の中でも一番じゃないなんて。あなたと付き合ってる時間は彼女にとって、無駄だと思うけど」
「人生に無駄なことなんてないと思うけどなぁ」
「それは一般論よ。女の二十代は人生の中で一番尊いのよ。そんなこともわからずに、あんな若い子と付き合ってるわけ?」
「若いいい時間を費やしたんだから、責任取れってヤツ?」
「そうよ。責任取れないなら、手を出すなってこと」
「どうして、そんなにもレナと別れさせたい? 仕事だからか?」
「仕事だからっていうのも、勿論あるわ。でも、あの子がいい子だからよ」
「レナが?」
「そう。あなたの奥さんに対してもちゃんと罪悪感を持って、あなたと付き合ってたわ。いずれ、別れなきゃいけないと思ってるとも。いい機会だと思わない? 後腐れなく別れられるわよ。女から言い出す別れなんだから」
「……考えておくよ」
ヒサシの返事を聞いて、アスカは残っていたモヒートを一気に流し込んで、コースターの上にとんっとグラスを置いた。

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