「シンゴさんは、奥さんのことを信用しているんですね」
「信用?」
予想外の言葉にシンゴは鸚鵡返しに問うた。
「だって、そうでしょう? 奥さんが必ずレナと不倫相手を別れさせるなんて……。奥さんを信用していなかったら。言えないことですよ」
「……」
「てっきり、シンゴさんは奥さんを信用していないんだと思ってました。不倫してるって、本当は思っていないんじゃないですか?」
「不倫してないって思ってたら、尾行なんてしないよ」
「不倫していないってことを確かめたいから、尾行しているように俺には見えます」
「……」
ユウキの言葉にシンゴは戸惑った。確かに何度も不倫をしていなければいいな、とは思った。けれど、状況を見れば、不倫をしていると思えることだらけだ。不倫をしていない、と思うのは、現実逃避以外の何ものでもないとシンゴは思う。
「不倫されていなければどれだけいいか……。でも、見ちゃったんだ。アスカが不倫相手とホテルに入って行くところ。今でも忘れられないよ。真っ白なコートの白色が鮮やかだった」
シンゴは嫌な記憶を振り払うようにかぶりを振った。
「なんだか和気藹々としてますよね……」
「表情がころころ変わって、どんな話をしているのか、どういった結果になっているのか……。確かにわかりづらいね」
シンゴは飲みながら、アスカとレナの様子を見ていた。
きっと話は終わったのだろう、とアスカの顔を見て思う。けれど、ユウキには敢えて何も言わなかった。シンゴにとっては、これからが本番なのだ。時間が過ぎていくに従って、落ち着かない気持ちをユウキに悟られまいとするので精一杯だった。
「この後、レナが奥さんと別れたら、レナの後をつけようと思います」
「不倫相手と会うかもしれないから?」
「はい……。もし会っていたら、止めようと思うんです」
「それはやめた方がいいよ」
「えっ……」
ユウキはシンゴの言葉に驚き、グラスを持とうとした手を止めた。
「どうしてですか?」
「もし、今日、彼女が不倫相手と会ったなら、それは別れ話をする為だからだよ」
「でも……」
「折角の別れ話の機会を自分で潰してしまっていいの?」
「それは……」
「アスカは必ず彼女と不倫相手を別れさせてくれるから、心配はいらないよ」
シンゴの言葉にユウキは驚いていた。
「時間が解決してくれるなら、私も立ち直れるんでしょうか……」
「ええ、あなたにしっかり覚悟があるなら大丈夫なはずよ」
「私、頑張ってみます。彼に、さよならを……言ってきます」
「彼とちゃんと別れられたら、飲みに行きましょう」
「えっ……」
「新しいスタートを切るんだもの。お祝いが必要だわ」
「アスカさん……」
レナは瞳を潤ませて、アスカを見た。アスカは穏やかに微笑み、レナを見据える。
「彼と別れたら、アスカさんに連絡しますね」
「ええ、連絡待ってるわ」
アスカは通りすがりの店員を呼び止めると、ドリンクを頼み、レナは追加で料理を頼んだ。
さっきまでの胸の閊えが嘘のようにレナは楽しそうにアスカと他愛ない話をし始める。
これからのことをレナはどう考えているのだろうか。アスカは少しの不安と心配を持ちながら、レナを見ていた。
彼女を受け止める誰かがいればいい。けれど、もしいないのだとしたら、自分が受け止める誰かになろう、とアスカは決めていた。仕事でレナと接触しただけなのだから、そんなことをする必要は全くない。しかし、アスカには真っ直ぐなレナを放っておくことなど出来なかった。
こんにちは☆
Hayamiです。
あっという間に6月が終わろうとしております……!
そして、ごめんなさい……。
ブログ更新日を1回飛ばしちゃってたみたいです……。
更新する時になって、気が付きました……。
そんなわけで、6月は今回のみの更新となります。
6月は仕事であっという間に過ぎてしまいました。
きっと、5月は体調不良でほとんど寝込んでいたからだと思います……。
いろんな仕事を挽回中なので、このままの勢いで7月に突入したいと思います!!
頑張って、たくさんの作品を届けられればと思います☆
≪お知らせ≫
個人ブログ「Hayami’s FaKe SToRy」にて、
お仕事依頼・作品感想用メールアドレスを設置しております☆
アドレスはhayami1109@gmail.comです。
作品の感想等送っていただけますと幸いです。
メールは直接私のところまで届きます☆
≪番外編のお知らせ≫
番外編「ドライフルーツ・シンキング~マンゴーな過去に~」はもう読んでいただけたで
しょうか?
作家のシンゴの視点で語られるアスカとのなれ初めや、
シンゴが考えていることを物書きとして描いている、というお話です。
全10回となっておりますので、ぜひこちらも併せてご覧下さい☆
メールドレス登録はこちらから↓
http://tinychain.com/?page_id=382
次回もよろしくお願い致します☆
「……」
レナはアスカの言葉を聞いて、胸がいっぱいになってしまったのか、涙ぐみながら、その涙を零さないように天井を見上げた。
「だけどね、そういった不安って、不倫をやめようとしているから感じるものかしら?」
「え……?」
「どんな恋愛も終わりに向かっている時はそういった不安を感じるんじゃない? そうした不安に耐えたり、時に飲みこまれたりしながら、それを乗り越えられた時に新しい恋愛をするんだと、私は思うな」
アスカはそこまで言うと、にっこり微笑んで、レナを見た。
レナはまだ少し驚いたような表情でアスカを見ている。その表情はアスカの言ったことを理解することだけで精いっぱいのように見えた。
「だから、あなたが感じている不安は、不倫から来る不安ではないと思うの」
「……確かにアスカさんの言う通りかもしれないですね……」
「きっと大丈夫よ。別れた時は寂しくても、時間が癒してくれるはずだわ」
アスカは月並みなセリフだと思いながらも、それ以上の気の利いた言葉を思いつくことも出来ずに言った。