小説「サークル○サークル」01-288. 「加速」

レナは黙ったまま、じっとアスカを見ている。言葉を探している素振りもなかった。ただアスカの言っていることが正しいとその目は言っていた。
「違った?」
アスカは正しいということがわかっていながら、レナに問う。何を考えているのか、レナの口から聞きたかったのだ。
「……終わりに近づいているんだと思います」
レナは小さな声で言った。
アスカはやっぱりわかっているのね、と思ったけれど、それは口には出さなかった。
アスカがレナと接触するようになってわかったのは、レナは賢いということだった。
大抵、不倫をしている場合、我を忘れている場合が多い。その為、客観的に自分や相手を見ることが出来なくなってしまっているのだ。けれど。レナは違った。感情で動いているように見えて、その実、至極冷静に現状を把握していた。
だからこそ、アスカはレナのことが少し不憫でならなかった。冷静さを保っているということは、罪悪感もしっかり感じているということだからだ。


dummy dummy dummy