小説「サークル○サークル」01-79. 「動揺」
- 2012年04月09日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「だから、今日は少し話し相手になってもらえませんか?」
相変わらず、紳士的な物言いにアスカはくらっとしてしまう。
「はい。幸い、今日はお客様もいつもより少ないですし」
アスカが笑顔で返すとヒサシも微笑み返した。こんなにも容易く微笑み返す男はなかなかいないが、それが女の心を簡単に掴んでしまえる理由なのかもしれない。アスカはヒサシが激昂したり、不機嫌になったりする情景を思い浮かべることが出来なかった。いつでも穏やかに物事を解決してしまえるような気がしていた。きっと女をイライラさせたりはしない。そんな風にさえ思えた。
女は余裕のある男に弱い。それをきっとヒサシの端々に出る態度で感じるのだ。そして、妻帯者でありながらも、他の女はヒサシの魅力に憑りつかれてしまう。もしかしたら、この余裕は妻帯者だからこそのものかもしれない。けれど、ヒサシの魅力に憑りつかれた女にはそんなことなど関係なくなってしまうのだろう。独身の男にはない魅力で女の心はいとも簡単に骨抜きにされてしまうのだ。
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