小説「サークル○サークル」01-221. 「加速」

アスカは大きな溜め息をつくと、煙草に火をつけた。
煙がたゆたい、煙草の香りが部屋に充満していく。
何度も煙を吐き、煙草が短くなると、アスカは灰皿に押し付けた。
続けて、二本目の煙草に火をつける。同じようにあっという間に煙草は短くなった。
すぐに終わってしまう煙草を見ながら、アスカはふと自分の人生について考える。
別れさせ屋の仕事にはやりがいを感じていたし、楽しいとも思う。この仕事に就けて、本当に良かった、そう言える。けれど、どこかでこの仕事を選ばなかった時のことを考えてしまうのも事実だった。
アスカにはシンゴと結婚する前、恋人がいた。結婚を考えられる相手だった。その恋人は言った。「結婚したら、仕事は辞めて、家庭に入ってほしい」と。
結婚を考えていたはずなのに、その恋人にプロポーズをされ、そう言われた時、アスカは嬉しいという気持ちよりも、どうしよう、という気持ちが大きかった。
彼の出した条件は自分の仕事を否定しているように聞こえたのだ。


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