小説「サークル○サークル」01-409. 「加速」

「仮にレナが不幸せだったとしましょう。では、どうして、不倫を続けたと思いますか?」
「それは……」
ヒサシの言葉に今度はユウキが黙る番だった。
レナは俯いたまま、二人の話を聞いている。
自分の所為でいがみ合わなくてはいい二人がいがみ合っているのだ。そんな光景を見るのは、心苦しいだろうし、今にも逃げ出したい気分だろう。
そう思いながら、アスカはレナを見つめていた。
こんな若さで、こんな思いをする必要性は彼女にはなかったはずだ。ただ一つ、不倫という道に足を踏み入れさえしなければ、良かっただけの話なのだ。
けれど、彼女は踏み入れてしまった。それは自業自得だけれど、なんだかちょっぴり可哀想にも思う。きっと彼女が以前口にしていたヒサシの奥さんへの謝罪の言葉の所為だろう。。
「それは……」
ユウキはしばし考えた後、言葉を選びながら口を開く。
「それは、あなたのことが好きだからではないでしょうか」
ユウキにとって、レナがヒサシのことを好きだと認めるような発言はしたくなかったに違いない。


dummy dummy dummy