小説「サークル○サークル」01-414. 「加速」

きっと、ユウキは今の自分に当てはまるから、言葉を失ったのだろう。ユウキは片思いだとわかっていても、レナと会えることで幸せを感じているに違いなかった。
「いい加減にしてよ」
突然、ずっと黙っていたレナが口を開いた。アスカは驚いて、レナの方を見る。
「私のこと、なんだと思ってるの?」
レナは抑えた声の中にも怒りを滲ませていた。
「私はあなたに片思いをしていたとでも言うの? 私はあなたの一番だと思ってたから、付き合ってたの。それなのに……」
「そういう意味じゃない。言葉のあやさ」
「言葉のあやなんて嘘。そういう気持ちがなければ、出てこない言葉よ。わかってた。あなたに本当は私以外の女の人がいることも」
「……」
ヒサシは意外だというように、ほんの少し目を見開いた。彼が驚きを示したのは、その一瞬だけで、すぐに元の表情へと戻る。
アスカはレナが他にも浮気相手がいるという事実を知っていた、ということを気の毒に思った。大勢いる中の一人である、ということが、どれほど、女のプライドを傷つけるかは、想像に難くない。


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