小説「サークル○サークル」01-97. 「加速」

 内心、シンゴのことを凄いと思っていたアスカだったが、敢えてそれは口にしなかった。口にすることで、自分の負けを認めてしまうような気がしたからだ。
「それで、どうなったの?」
 シンゴはスープをすすりながら問う。
「調査の再開をしてほしいって言われたわ」
「さすがだね。調査を継続していて正解じゃないか」
「そこの読みは当たったみたい。ただ……」
 アスカはそこまで言って、言葉を区切った。しかし、思い直して、口にするのはやめた。何でもかんでも話す必要はないと思ったのだ。ヒサシがマキコにアスカの話をしなくなったことの意味を考えれば尚のことだ。夫という立場のシンゴには聞かせるのは、ナンセンスだと思った。
「どうしたの?」
「いいえ、なんでもないわ」
 アスカは笑顔で答える。それを見たシンゴは、珍しいアスカの笑顔に違和感を覚えた。そういうことか、と思った。
 アスカは後ろめたさに、鼓動が少し速まっていくのを抑えることが出来なかった。


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