小説「サークル○サークル」01-105. 「加速」

「君、仕事は?」
「今日は遅番でちょうど今帰りなんです。あっ、お昼ご飯もう食べました?」
「いや、まだだけど……」
「廃棄するおにぎりもらってきたんですけど、一緒にどうですか?」
「でも……」
「どうせ、一人でご飯食べるんなら、オレと食べましょうよ。今、自販機でお茶買ってきますから」
 ユウキはそう言い残すと、ビニール袋に入ったおにぎりを置いて、自動販売機まで走って行ってしまった。空を見上げれば、さっきと変わらず、雲が静かに流れている。
「お待たせしました! ウーロン茶と緑茶、どっちがいいですか?」
「緑茶をもらってもいいかな」
「はい、どうぞ」
 シンゴはユウキからペットボトルの緑茶を受け取ると、ポケットから財布を取り出した。
「わざわざ買ってきてくれて、ありがとう」
 そう言って、シンゴは二人分の小銭をユウキの前に差し出した。
「いいですよ、そんなの。オレが無理やり誘ったようなものですし」
「遠慮せずに取っておいてよ。大人に気を遣うものじゃない」
 ユウキは渋々シンゴからお金を受け取って、怪訝な顔をした。
「あの……多いんですけど……」
「このくらいご馳走するよ」
 シンゴの微笑みにユウキは笑顔で頷いた。


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