小説「サークル○サークル」01-105. 「加速」

「君、仕事は?」
「今日は遅番でちょうど今帰りなんです。あっ、お昼ご飯もう食べました?」
「いや、まだだけど……」
「廃棄するおにぎりもらってきたんですけど、一緒にどうですか?」
「でも……」
「どうせ、一人でご飯食べるんなら、オレと食べましょうよ。今、自販機でお茶買ってきますから」
 ユウキはそう言い残すと、ビニール袋に入ったおにぎりを置いて、自動販売機まで走って行ってしまった。空を見上げれば、さっきと変わらず、雲が静かに流れている。
「お待たせしました! ウーロン茶と緑茶、どっちがいいですか?」
「緑茶をもらってもいいかな」
「はい、どうぞ」
 シンゴはユウキからペットボトルの緑茶を受け取ると、ポケットから財布を取り出した。
「わざわざ買ってきてくれて、ありがとう」
 そう言って、シンゴは二人分の小銭をユウキの前に差し出した。
「いいですよ、そんなの。オレが無理やり誘ったようなものですし」
「遠慮せずに取っておいてよ。大人に気を遣うものじゃない」
 ユウキは渋々シンゴからお金を受け取って、怪訝な顔をした。
「あの……多いんですけど……」
「このくらいご馳走するよ」
 シンゴの微笑みにユウキは笑顔で頷いた。

小説「サークル○サークル」01-104. 「加速」

「あぁ、君は……」
「覚えててくれたんですね。コンビニではいつもありかどうございます。この間はお話出来て嬉しかったです。隣、いいですか?」
 ユウキに言われて、シンゴは「あぁ」と言い、少し左端に寄った。
 ユウキは遠慮がちにベンチに腰をかけると、シンゴの方を向いた。
「いつもこんな風に公園で小説の構想を練っているんですか?」
 ユウキに問われて、シンゴは口籠る。ただぼーっとしていただけだったが、それを口にしてしまうのは憚れた。なんだか読者の夢を壊してしまうような気がして、申し訳ないような気分になったのだ。
「たまにね、こうやって、外の空気でも吸おうかな、と思うことがあるんだ」
 シンゴはあたかも仕事のことを考えていたというような体で話し出す。折角の、数少ない読者の為についた嘘だった。
「やっぱり、すごいですね。モノを書くなんて、オレには到底無理ですよ。小学校の読書感想文で精いっぱいです」
「すごくはないよ。日本人なら誰でも日本語で文章が書ける」
 自分の仕事のことを話すと、必ずと言っていいほど、読書感想文を引き合いに出されることが多かった。読書感想文が上手いからと言って、小説が書けるわけではなかったし、小説が書けるからと言って、読書感想文が上手いわけでもない。その証拠にシンゴは読書感想文で賞をもらったことなど一度もなかった。

【森野はにぃ】あなたの好きな季節は?


みなさん、こんにちは。

森野はにぃです。

本日、「ワンダー」103話が配信されました。

5月も今日を入れて、残り4日となってしまいました。

月日が経つのはほんっとーに早いですよね。

たまーに外に出ると、すでに夏のような暑さで、

春はどこへ行ってしまったのだろう……と思います。

折角、可愛い春服買ったのに、ほとんど出番がなかった……!

仕事で引きこもってるからっていうのもあるとは思いますけど(笑)

梅雨はじめじめしてるし、低気圧で体調悪くなってしまったりするので、

早く夏になればいいなー、と思う反面、夏も苦手なので、

とっとと秋になって欲しいなー、と思う今日この頃です。

でも、夏服は好き(笑)

皆さんは季節の中で何が一番好きでしょうか?

良かったら、教えて下さいね☆

それでは、引き続き、「ワンダー」をお楽しみ下さい☆

小説「サークル○サークル」01-103. 「加速」

 次にシンゴがユウキに出会ったのは、あれから数日後のことだった。アスカは仕事に行き、部屋の片付けや洗濯を終えたシンゴは、気分転換にふらふらと近くの公園にやって来ていた。シンゴはベンチでぼーっと何の変哲もない景色を眺めているだけだった。人はほとんどいない。何かくれるんじゃないかと期待して鳩が数羽、シンゴの周りへ寄って来たが、何もくれないとわかると、愛想を尽かしたように一斉に飛び立って行った。
 何かの相手をするほどの気力はシンゴには残っていなかった。家事をしただけで、体力と気力を奪われてしまう自分に溜め息をつきたくなる。
 空は晴れ、時折、風に乗って雲が流れた。空を見ていると、自分がとってもちっぽけで、自分の仕事の悩みやアスカが浮気に走りそうだということがどうでも良いことのような気になった。それは嫌な気持ちが和らぐという意味では良いのかもしれないが、何も解決に導かれていない、ということを考えると必ずしも良いとは言い切れなかった。シンゴはそのことに気が付いて、はっする。思わず、今度は本当に大きな溜め息が口から零れた。
「どうしたんですか? 溜め息なんかついて」
 突然、声が飛んできて、シンゴはドキリとした。声のした方を向くと、そこにはユウキが立っていた。

【めぇぷる べりぃ】お知らせです☆


「サークル○サークル」を連載させていただいている私、Hayami
声優・池ヶ谷華菜子による新コンテンツが本日10時よりスタートしました!

その名も「めぇぷる♥べりぃ」です!

この「めぇぷる♥べりぃ」とは、
駆け出しの作家と声優が皆様のお便りを元に発信する
インターネットラジオ番組です。

初回はお便りがないので、自己紹介やコーナー説明、
出来るコーナーをちらりとやらせていただいております。

初回放送ということで、不慣れな点もあるかと思いますが、
ぜひぜひ聴いてみて下さいね。

そして、ラジオ番組はお便りが命!

ということで、皆様どしどしお便りをお待ちしております!


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