小説「サークル○サークル」01-379. 「加速」

 アスカは事務所に着くなり、煙草に火をつけた。肺いっぱいに煙を吸い込み、吐き出す。溜め息が零れた。
 多分、アスカがしなければならないことは、ほとんど全て終わっただろう。あとはマキコにヒサシに依頼がバレたことを悟られなければ問題はないはずだ。
 アスカは書類に目を通す。
 マキコに依頼されてから、数ヶ月が経ち、どうにか業務は完遂出来そうだった。
 アスカは自分の仕事のことを考える。
 レナとヒサシが別れて、それで全てが解決されるわけではない。
 ヒサシにはまだ不倫相手が数人いるし、マキコのお腹の中の子どもがヒサシの子ではなく、不倫相手の子どもだとしたら、これから離婚が待っているだろう。そして、話し合いが行われ、マキコとヒサシは別々の人生を歩き始めるのだろう。
 アスカが請け負うのは、ヒサシとレナを別れさせるところまでだ。
 けれど、その先にも彼女たちには様々なことが待ち受けている。
 それを思うと、自分のしている仕事は刹那的なのではないか、と思ってしまう。勿論、この仕事の重要性を十分理解しているものの、どこか空しくなってしまう時があるのもまた事実だった。


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