小説「サークル○サークル」01-111. 「加速」
- 2012年06月12日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
シンゴは久々にノートパソコンの電源を入れた。起動音が懐かしい。真っ暗な画面が点滅し、やがてパスワードの入力画面が出た。シンゴはパスワードを入力すると、メーラーを立ち上げる。読まれていないメールはゆうに百を超えていた。仕事関係者からのメールから読もうと、日付順から差出人順にメールを並べ替えた。けれど、いくらスクロールしても、仕事関係者からのメールは見当たらなかった。
「……こんなもんだよな……」
シンゴは溜め息をついて、シャットダウンもせずにノートパソコンを閉じようとした。いくらスクロールしたって、仕方がない。しかし、シンゴがノートパソコンを閉じようとしたその瞬間、見覚えのある名前が目に飛び込んできた。
「嘘……だろ……」
言葉が掠れ、自分の動揺にはたと気付く。画面にはシンゴが小説を書けなくさせた張本人の名前があった。
急速に速まっていく鼓動を落ち着けようともせず、シンゴは急いでその差出人からのメールをクリックした。