小説「サークル○サークル」01-115. 「加速」

 離婚の原因は元妻の仕事にあった。彼女の仕事は編集者だった。しかも、担当していたのは、シンゴだ。彼女は、良き妻であり、良き編集者だった。けれど、そのことがシンゴを苦しめた。元妻はシンゴには勿体ないくらい出来た人だった。消極的なシンゴに対し、恋愛でも仕事でも積極的だったから、消極的なシンゴが恋愛をし、結婚出来たのは彼女のおかげだったとも言える。年上でしっかりしていて、シンゴは甘えっぱなしだった。無論、そこに原因などあるはずもなかった。原因はシンゴの心の持ちようだった。仕事でもプライベートでも、シンゴは担当編集者といると思ってしまっていたのだ。元妻がただの妻に戻る瞬間をシンゴは見つけられなかった。そうなってくると、プレッシャーしかない。そのプレッシャーを外で発散させれば良かったのかもしれないが、シンゴにはそんな器用なことは出来なかった。そのことがシンゴを兎に角苦しめた。自分の心が安らぐ場所がどこにもなく、結局、シンゴは悩んだ末、離婚という選択肢を選んだ。
 そして、シンゴは作家として、機能しなくなった。


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