小説「サークル○サークル」01-185. 「加速」

 アスカはしばしメニューを見つめる。ここで無難にコーヒーを頼んでしまっては、レナの印象に残る確率は低い。出来るだけ、他の客が頼まないようなドリンクを頼む必要があった。そして、これから毎日、そのドリンクを飲み続けなければ意味がない。
 飽きがこなくて、尚且つ印象的なものを……と悩んでいると、ふとホワイトモカというドリンクが目に留まった。ホワイトチョコレートをベースにしたコーヒーだった。
「すみません、ホワイトモカを下さい」
 アスカはメニューを指差しながら、オーダーする。
「かしこまりました。サイズはいくつになさいますか?」
「Mサイズでお願いします」
「店内でお召し上がりですか?」
「はい」
「450円です」
 レナはテキパキと仕事をこなしていく。アスカはそんなアスカの姿に好感が持てた。ドリンクのオーダーを通したレナは、会計へと戻る。
「500円お預かりいたします」
 そう言って、レナは500円をキャッシャーに入れ、50円を取り出すと、レシートともにアスカに差し出した。
「50円のおつりでございます」
 レナは笑顔で言うと、少し離れたカウンターを指した。
「あちらのカウンターでお出ししますので、前でお待ち下さい」
「はい」
 アスカもレナに笑顔を向けた。

【Hayami】引っ越しました!!


こんにちは☆

Hayamiです。

本日、「サークル○サークル」184話が配信されました。

今月1日に引っ越しました!

そうです!念願の一人暮らしです☆

だけど、仕事のスケジュールが押してまして、

まさかの修羅場の中の引っ越し作業!

そんなわけで、1日半で荷造りをし、

ダンボールに囲まれながら、ずっと仕事をしてます(笑)

来週の月曜日から4日間、友達が地方から遊びに来てくれるので、

私もそれに合せて、お休みをいただきます☆

4日間連続のお休みなんて、この仕事を始めてから、

初なので、たっぷりリフレッシュしてきたいと思います!
≪お知らせ≫

個人ブログ「Hayami’s FaKe SToRy」にて、

お仕事依頼・作品感想用メールアドレスを設置しております☆

アドレスはhayami1109@gmail.comです。

作品の感想等送っていただけますと幸いです。

メールは直接私のところまで届きます☆
≪番外編のお知らせ≫

番外編「ドライフルーツ・シンキング~マンゴーな過去に~」はもう読んでいただけた
でしょうか?

作家のシンゴの視点で語られるアスカとのなれ初めや、

シンゴが考えていることを物書きとして描いている、というお話です。

全10回となっておりますので、ぜひこちらも併せてご覧下さい☆

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次回、185話もよろしくお願い致します☆

小説「サークル○サークル」01-184. 「加速」

 翌朝、アスカはジムで汗を流すと、レナの働くカフェへと向かっていた。アスカは今日何度目かの欠伸をかみ殺す。
 さすがに久々の早起きはアラサーの身体には堪えた。しかも、その後、アスカを待っているのは、ジムのトレーニングマシーンだ。元々、文科系で運動とは無縁の学生時代を送って来た。そんなアスカがジムに通って、運動をすることになるとは、誰が予想出来ただろうか。アスカ自身、全く想像のつかない出来事だった。人生は何があるかわからないものたなぁ、としみじみ思う。これから、毎日この生活をしなければならないのかと思うと、アスカは憂鬱だった。
 アスカはジムから数分の場所に位置するカフェへとやって来ていた。問題はヒサシと鉢合わせないかということだった。少しだけ緊張しながら、カフェの自動ドアの前に立つ。
「いらっしゃいませー!」
 自動が開いた瞬間、笑顔で迎えてくれたのは、他でもないレナだった。
 アスカは澄ました顔でレジへと向かう。カウンターにはドリンクメニューが置かれてあった。

小説「サークル○サークル」01-183. 「加速」

 食事を終え、シンゴは自室にこもる。仕事をする為だ。書き出しから、いくらか進んでいた。今までのアスカと自分のことを書けばいいのだ。執筆に詰まるということは特になかった。
 けれど、いつか執筆が現実に追いついてしまう。その時が問題だ。
 そして、シンゴは事実をもっと詳細に知りたいと思うようになっていた。アスカはいつからヒサシと関係を持っているのか、何がきっかけでヒサシに惚れたのか、今後、どうするつもりなのか――。
 そこまで考えて、シンゴは深い溜め息をつく。空しかった。
 原稿を書く度に訪れる悲しみとも切なさともとれる、痛みを伴った感情は、シンゴの心を蝕んでいく。
 シンゴは原稿を書く手を止めた。
 パソコンの画面の明るさがやけに眩しく感じる。
「……そうだ」
 シンゴは画面を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「……もう一度すればいいんだ……」
 シンゴが思いついたのは、至極単純なことだった。
――そうだ、もう一度、尾行をすればいいんだ。
 この答えが正しいかどうか、シンゴにはまだわからなかったけれど、シンゴにはそれ以外に方法はないように思えていた。

小説「サークル○サークル」01-182. 「加速」

「仕事大変なのね」
 アスカは心配そうに言う。
「そんなことないよ。アスカに比べたら、楽だと思うな」
「ううん、何もないところから作品を生み出すのって、想像が出来ないくらい大変なことだと思うの。私には出来ないことよ。本当にすごいと思うわ」
 シンゴは素直に嬉しかった。自分の仕事を認めてもらえるということが、自分の存在価値を認められたような気がしていた。
「アスカは明日からレナに接触するの?」
「ええ、ジムの入会も終わったし、ジムに通いながら接触して、様子を見るつもり」
「仕事とは言え、ジム通いは健康の為にも良かったかもね」
「ふふ、そうかもしれないわね」
 アスカはまた楽しそうに笑った。夫婦の会話が皆無だった、あの寒々しい雰囲気が嘘のようだった。
 けれど、シンゴの脳裏にはいつだって、ヒサシのことが過ぎっていた。
 アスカがこうやって、楽しそうに笑うのは、ヒサシの存在が関係しているかもしれない。そう思うと、胸の奥が痛んだ。


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