小説「サークル○サークル」01-181. 「加速」

 生活をしていると特別なことよりも、日常の当たり前の出来事の方が圧倒的に多い。いかに、その当たり前の時間を一緒に過ごして楽しいかが結婚をすると大切になってくる。
 くだらないことでも話せて笑い合える方が、断然楽しい。そういうことに、シンゴは結婚してから気が付いた。
 それはシンゴ自身、一度結婚に失敗しているから気が付けたことかもしれない。
 アスカとジムの近くのパン屋の話をして、笑い合える。傍から見たらどうでもいいような、そんなことでさえ、シンゴにとっては、意味を持つ。それは相手がアスカだからだ。
 シンゴは楽しそうに話すアスカを見ながら、自分にとっての幸せや結婚を考えていた。
「手が止まってるけど……口に合わなかった?」
 アスカは心配そうにシンゴに訊く。
「いや、そんなことはないよ。とても美味しい。ちょっと考え事をしてしまっただけだよ」
「仕事のこと?」
 アスカはすかさず問う。
「ああ」
 シンゴは誤魔化す為に嘘をつく。
 アスカのことを考えていたとは、さすがに言えなかった。

【森野はにぃ】10月もあとちょっと!


みなさん、こんにちは。

森野はにぃです。

本日、「ワンダー」180が配信されました。

は、早いですね……!

まさかもう10月が終わろうとしているなんて……!

私は驚きを隠せないまま、10月を終えてしまいそうです。

それにしても、昼間は暖かくて、夜は寒い……なんて気候だと、

風邪を引いてしまう人が続出なのもなんだか仕方ないような……。

皆様も風邪にはくれぐれもお気を付け下さいませ。

私はおバカなので、夏風邪しか基本的に引かない為、

バッチリ健康です(笑)

それでは、引き続き、「ワンダー」をお楽しみ下さいませ☆

小説「サークル○サークル」01-180. 「加速」

 洗面所からリビングへ戻ると、アスカがテーブルに食事を並べていた。今日はクリームシチューだった。
「ちょうど今出来たところよ。座ってて」
 アスカは手際よく、食卓にサラダやパンを並べる。シンゴは席に着くと、甲斐甲斐しく働く妻の姿をまじまじと見た。
「これで全部揃ったわね」
 テーブルに並べられた料理を見て、アスカは小さく頷くと、椅子に座った。
「食べましょうか」
 アスカに笑顔で言われ、「ああ」とシンゴは答えた。
「いただきます」
 二人で声を揃えて言うと、アスカとシンゴは食事に手をつけた。
「そうそう、このパン、今日ジムの帰りにパン屋さんで買って来たの。すごく美味しいって有名みたい。雑誌でも取り上げられたことがあるんですって」
 アスカは嬉しそうにパンの説明をする。
「へぇ、そんなパン屋があの辺にあるなんて知らなかったなぁ」
 シンゴは言いながら、パンに手を伸ばした。
 一口サイズにちぎり、ぽんっと口に放り込む。ふんわりとした食感とパンの甘味が口いっぱいに広がった。
「有名店だけあるね。美味しいよ」
「良かったぁ」
 アスカは柔らかな笑顔で応えた。こんな笑顔をずっと見ていたいとシンゴは心の底から思った。何気ない日常にこそ、幸せはあるのだな、とシンゴは痛感していた。

小説「サークル○サークル」01-179. 「加速」

「もうすぐ出来るから、顔でも洗ってきたら? なんだか眠そう」
 アスカは鍋から目を離すと、シンゴの顔を見て言う。
「……うん、そうだね」
 シンゴはソファから立ち上がると、アスカに言われた通り、洗面所へと向かった。
 冷たい水で頬が濡れる。じゃぶじゃぶと顔を洗うと、フェイスタオルで水を拭った。冷たさから解放されて、なんだかほっとする。そのまま、シンゴは顔を上げた。
 洗面台の鏡に映る自分を見て、思わず溜め息をつく。ちっとも冴えない顔をしていたからだ。
 こんな冴えない自分とアスカが釣り合うわけなんてない、とシンゴは思う。けれど、一度はそんな自分でも好きになってもらえたのだから、たとえアスカの気持ちがターゲットに移ろっても、もう一度好きになってもらうことは出来るはずだ、とも思う。
 しかし、一度こぼれた水が元に戻らないように、一度壊れた夫婦関係が元に戻ることはないようにも思えた。
 堂々巡りの想いに、シンゴはどう向き合っていいのか、次第にわからなくなりつつあった。

小説「サークル○サークル」01-178. 「加速」

 シンゴが目を覚ますと、夕飯の匂いが鼻先をついた。目を開け、光を感じると、視界が開ける。ぼんやりする頭のまま、キッチンに目をやると、そこには髪を束ね、エプロンをしているアスカの姿があった。
「ごめん……。寝ちゃってたみたいだ」
 シンゴはソファからアスカに声をかける。
「いいのよ。疲れていたんでしょう?」
 アスカは微笑む。その笑顔にシンゴはじんわりと込み上がる幸せを感じていた。
「仕事は終わったの?」
「ええ。ちゃんとジムにも入会して来たわ」
「じゃあ、あとは、レナと接触すればOKってこと?」
「そうなるわね」
 アスカは調理中の料理から視線を外さずに、シンゴに答える。
「レナと接触して、ターゲットと別れさせたら、今回の仕事はやっと終わるわ」
 その一言に、シンゴはドキリとした。この仕事が終わったら、アスカはどうするつもりなのだろう、と思ったのだ。アスカはシンゴを捨て、ターゲットと付き合うつもりだろうか。それとも、ダブル不倫をやってのけるつもりだろうか。
 仕事が終われば、これっきりとなればいいけれど、そんな生易しい現実が待っているとはシンゴには到底思えなかった。


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