小説「サークル○サークル」01-182. 「加速」
- 2012年11月01日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
「仕事大変なのね」
アスカは心配そうに言う。
「そんなことないよ。アスカに比べたら、楽だと思うな」
「ううん、何もないところから作品を生み出すのって、想像が出来ないくらい大変なことだと思うの。私には出来ないことよ。本当にすごいと思うわ」
シンゴは素直に嬉しかった。自分の仕事を認めてもらえるということが、自分の存在価値を認められたような気がしていた。
「アスカは明日からレナに接触するの?」
「ええ、ジムの入会も終わったし、ジムに通いながら接触して、様子を見るつもり」
「仕事とは言え、ジム通いは健康の為にも良かったかもね」
「ふふ、そうかもしれないわね」
アスカはまた楽しそうに笑った。夫婦の会話が皆無だった、あの寒々しい雰囲気が嘘のようだった。
けれど、シンゴの脳裏にはいつだって、ヒサシのことが過ぎっていた。
アスカがこうやって、楽しそうに笑うのは、ヒサシの存在が関係しているかもしれない。そう思うと、胸の奥が痛んだ。