小説「サークル○サークル」01-275. 「加速」

シンゴはアスカの口から「嫌いにならないで」なんて言葉が出てくるなんて思ってもみなかった。
これは不倫相手と別れたことを意味しているのだろうか? それとも、継続している上での謝罪なのだろうか?
シンゴは考えてたみたものの、いまいちわからなかった。
「呆れちゃうよね、ホントにごめんね……」
アスカは申し訳なさそうに繰り返した。思わず、シンゴは口を開く。
「それは今までの家事に対するごめんなさい?」
「そうよ。小説を書くようになったシンゴはいつも疲れてるのに、文句も言わず、家事をしてくれるでしょう? しかも、完璧に。なのに、私は家事が下手過ぎて、いつも悪いなって思ってて……」
どうやら、アスカが謝っているのは、浮気のことではないらしい。シンゴは腑に落ちなかったが、作り笑顔を浮かべてアスカを見た。
「気にすることないよ。家事は得意な方がやればいいし、実際、アスカは一生懸命してくれているだろう? 僕はその気持ちだけで十分だよ」
「シンゴ……」
アスカは感動したようにシンゴを見た。
シンゴはアスカの隣に座ると、近くでアスカの目を見つめた。


dummy dummy dummy